広島高等裁判所松江支部 昭和25年(ネ)26号 判決
控訴人は控訴の趣旨として原判決を取消す。本件を鳥取地方裁判所米子支部に差戻す。訴訟費用は被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を棄却する。訴訟費用は控訴人の負担とする旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は控訴人において原判決は訴却下と請求棄却の二種の判決であるからこれを分離して差戻しと控訴審自判とを求めるべきであるが却下された部分も棄却された部分も不可分的訴因であるから一括して差戻しを求めると陳べた外原判決摘示の通りであるからこゝにこれを引用する。(各証拠省略)
三、理 由
先づ中間確認の訴の当否について考えてみるに控訴人の求める請求の趣旨は事実関係の確認であつて法律関係の確認ではない。民事訴訟で確認の訴の対象となるものは権利又は法律関係の存否であり只例外として民事訴訟法第二百二十五条の規定する法律関係を証する書面の真否に限つて事実の確認を求めることができるだけである。されば本件中間確認の訴は訴訟物にならないものを訴訟の目的としているから不適法として却下を免れない。
次に基本訴訟における被控訴人の本案前の抗弁について考えてみるに控訴人は昭和二十一年二月一日公布即日施行せる勅令第六十八号恩給法の特例に関する件第一条第六号は日本国憲法に不適合なる命令で無効であることの確認を求めるのであるがかように一般的抽象的に法令自体の無効確認を求めることは現行法令下における司法権の範囲外にあり裁判所において裁判する権限はないものと解するからこの部分の訴も不適法として却下すべきである。次に控訴人の長男竜男が予備陸軍歩兵軍曹とし従軍中昭和十三年九月十二日戦死したため被控訴人が控訴人に対し前示勅令恩給法の特例に関する件が施行される迄扶助料を支払う義務があつたことは被控訴人の認めて争わないところであるが右勅令施行と同時に被控訴人の控訴人に対する扶助料支払義務は消滅したのである。控訴人は右勅令は憲法又は法律違反の命令であるから無効である、従つて控訴人は今尚扶助料の支払を受ける権利があると主張するが現在日本はポツダム宣言の受諾により連合国の管理下にあり、千九百四十五年九月二日の降伏文書及び同日の連合国軍最高司令官の一般命令第一号第十二項によつて日本国政府の国家統治の権限は降伏文書の定める降伏条項の実施のため適当と認める措置をとる連合国軍最高司令官の制限の下にあり且日本国官民は連合国最高司令官の発する一切の指示に服する義務があり右勅令は千九百四十五年十一月二十四日連合国軍最高司令部覚書AG二六〇号に基いてこれを実施するため昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言の受諾に伴い発する命令に関する件により適式に発せられたものであり憲法又は法律によつてその効力を左右されるものでないと解するか恩給法の特例に関する勅令が憲法又は法律違反の命令で無効であるとの控訴人の主張は到底採用することができない。されば本件訴の中右勅令が無効であることを前提として金一万円及び之に対する損害金の支払を求める部分はその余の点について判断する迄もなく失当として棄却を免れない。されば以上と同旨に出た原判決は相当であるから民事訴訟法第三百八十四条第一項第八十九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 平井林 久利馨 藤間忠顕)